ISBN:978-4-910205-74-8
定価:\1600+税
作品概要
高校教師として私は令和2年の3月いっぱいで定年を迎えたのだが、なぜ私は教師になろうと思ったのか、ふと考えてみた。
その最初のきっかけは小5の時だったと思う。当時、私は無気力で、毎日学校を休むことだけを考えていた。そんな時、たまたま足が速かったため、市民体育大会に出ることになったのだが、その時コーチをしてくれたのが、まだ若き青年教師のM先生だった。M先生はとにかく生徒目線の先生で、なんでも「一緒に考えよう」というスタンスだった。毎日のように練習にとことん付き合ってくれ、いつも話をしっかり聞いてくれた。今思えば、当時、やや暗かった私を担任ではなかったのだが、元気づけようとしていたのかもしれない。そのおかげもあって、私はすっかり元気になり、いつの間にかM先生のような教師になることが私の夢となった。
そして晴れてその夢も叶い、意気揚々と教壇に立ったのだが、生徒指導困難校だったため、悪戦苦闘の毎日が始まったわけである。その後も、様々な高校を渡り歩いたが、その多くを少しでも生徒を支援するために教育相談担当として過ごしたように思う。今振り返れば日々失敗の連続ではあったが、大変貴重で得難い体験をさせてもらったと思っている。
ところで、教師の話というのは、とかく説教じみていたり、長々と訓辞を垂れることも多々ある。全校朝礼でめちゃくちゃ長い話をする先生や、終わりのホームルームの話が永遠と続く担任に対しては相当疲れたのではなかろうか。
そこで、このエッセイでは、なるべく親しみやすさに重点を置いて、クラスで雑談的に話すようなスタイルを試みた。第1話の「教師はモテるのか」から最終話の「巣立った後に」まで教師としての自分自身の普段着の姿をメッセージとして込めたつもりである。多くの方々に読んでいただけたらまことに幸せである。
著者紹介
久原 弘(くはら ひろし)1959年山口県生まれ。
山口大学大学院教育学研究科(臨床心理学)修士課程修了。
36年間の教師生活のうち25年間ほど教育相談を担当する。
平成12年より文筆活動を開始する。
第16回日本動物児童文学賞/最優秀賞(環境大臣賞)
第68回読売教育賞(児童生徒指導部門)最優秀賞など受賞。
(社)日本児童文学者協会会員。現在、子どもの頃より生き物が好きだったこともあり、希少野生動植物の保護支援活動をしつつ、文筆活動も続けている。