ISBN:978-4-910205-03-8
定価:\1600+税

作品概要

昨年1月には千葉県野田市で、小学4年の栗原心愛みあさん(当時10歳)が虐待を受けて死亡するなど、悲惨な事件が続いている。全国の警察が虐待の疑いがあるとして昨年1年間に児相に通告した子どもは、過去最多の9万8222人で、この中で「心理的虐待」が7万721人(72・0%)で、このうち子どもの面前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」は4万2569人。通告はこのほか、暴行などの「身体的虐待」が1万8279人(18・6%)、食事を与えないなどの「育児放棄(ネグレクト)」が8958人(9・1%)だった。 (2020.3.12 読売新聞オンラインより虐待の記事の一部抜粋)

いくら騒がれても絶えることのない虐待。いずれ日本を背負う子供たちが伸び伸びと成長できる社会にしなければ明るい未来は保たれない。虐待のニュースで怒りを覚えてもそれだけで時は過ぎ去ってしまうのが現実だ。結愛ちゃん、心愛ちゃんの事件が忘れられないが何もできないのが悲しい。世の多くの人たちは虐待を知らないのか。身近に虐待に繋がるものが存在していることを見詰めることが如何に大切かとつくづく感じたので訴えたい。

虐待を単なる暴力と思っている人が多い。子供の躾にときには物理的な力も必要だと言う者もいる。そうだろうか。そして虐待をしている者は必ずと言っても良いくらい躾のためだという。

身体的虐待はわかりやすいが、心理的虐待は家族の中でも気がつかない場合が多い。私も今思えば孫が幼児の時に虐待の走りがあったのだが気がつかず、虐待だとはっきり認識したのは中学生になったときだった。この間に悪の芽が着実に生長していたことになる。暴力、虐待は子育ての中から生じてくることが多いらしい。どのようにして悪の芽を出してくるのか。孫の成長の記録を詳しく見詰めながら明らかにできたら良いと思う。一つの実例だが虐待の根幹に通ずる基本の部分があると思う。子育てに、そして虐待の理解に活かせないものか。

著者プロフィール

本木春央(もとき はるお)
1936年東京の牛込区(現・新宿区)に生まれる。
国民学校3年の夏、親戚のない者は学校集団疎開となる。そこで親元を離れ父親の故郷へ疎開。戦地の兵隊さんを思え。戦争に勝つまでは耐えろとばかりに食事も行動も制限。祖父の教えに理解する兄は褒められ、鈍い僕はつばをかけられたり、ののしられたり。早朝になぜかトイレの窓から脱走したり。駅員に嘘ついて東京までの切符をねだったり。汽車に轢かれて死にたいと泣きわめいたりする悪い少年に。
1年後、国の方針で緊急立ち退き疎開を命じられ、信州に疎開した母親等の元に戻ると直ぐ終戦。祖父は戦争ノイローゼだったらしい。今で言うストレスによる病だ。現在では虐待に相当するだろうが、当時は当然躾だったのだろう。
戦後しばらくして落ちついた頃、母に詫びたと聞いた。緊急立ち退きがなかったらどうなっていただろうか。一つの動きで生きる環境が変わってしまう。人生にも影響がと思うと特に成長期の子育てには気をつけたい。私の今の気持ちも自分の育った環境からきたものだろう。