
ISBN:978-4-434-37436-4
定価:\3455+税
作品概要
著者であるウィリアム・カパスワイトはスコット ニアリングとの交流を通して、マハトマガンジーの思想とも触れ、自身の思索を深めた教育者です。
本書で伝えたい考え方の中心は次のような事柄です。
優しさ、思いやり、感謝の気持ちで自然の倉庫から必要なものを、少しだけ借りて、この地球の上で穏やかに暮らす方法を私たちはデザインしなければならない。ここに少しの間、住んでいられるという特権に感謝しながら。もし生活の持続に必要以上に多くのものを得ようとしたら、まだ十分所有していない人たちからそれを奪っていることになる。
私たちは新しい技術を作りださなければならない −− 優しく、思いやりのある技術だ −−
そうすれば、それを発展させるために多くの人々の知恵が集まってくる。新しい視点が緊急に求められている。どこの知恵であろうと使えるものは使う。昔の知恵、現代の知恵、遊牧民や定住民、農村や都市の知恵など、すべて使わせてもらう。私たちは技術を作り出すために最良の知恵を融合させる必要がある。(本文203ページより抜粋)
これを具体的な形で以下のように書いています。
社会システムをデザインしなおす。
私が子どもだったころ、「デザイン」という言葉は、芸術家が住んでいる、遥か遠い世界を意味していた。でも言葉の意味は自分の中で少しずつ変わってきた。これまでのデザインは表面だけの問題と考えるようになった。すると表面だけ体裁を整え、ひたすら買い手を騙すことを目指しているデザインに対してはもはや敬愛はなくなり、ただの失望に変わっていた。この感覚をもう少し別の角度から考えてみると、それは商業主義的な社会における言葉の誤用であると感じた。私の中でデザインは徐々にある種の「質」を意味するようになってきた。形の良いスプーンは機能的でもある。
私は機能的に優れたデザインの世界を見たいと思い旅立った。──そしてフィンランドのログハウス、オランダの風車、エスキモーの釣り針、インディアンのモカシン靴、スワムスコットドーリーなどを見た。
この旅でさらに楽しい発見があった。人が生きるためにいちばん大切なことの一つは、完成を目指して「削ぐ」ということだ。私はそれをあえてデザインと名付けた。
また、その言葉に含まれる意味は、モノに含まれる意味の世界とも共存している。私はこの旅において、社会への関心とその必要性についての理解を深めたことで、一つのフレーズにたどり着いた。それは「教育デザイン」という教育の新しい形を伝えなければならないということだ。これはまさに、言葉、物の世界とも繋がっている。はたして私のこの考えはさらにファミリーデザイン、コミュニティーデザイン、さらにはライフデザインと大きく広がっていった。これは自分自身の生活を論理的に形成していくということだ。そして一つの言葉に集約された──「ソーシャルデザイン」だ。
社会の全ての構成員が、将来の世界のデザインに参加する権利と義務があることを認識し、みんなが参加する必要生を理解して、その努力が本当に歓迎され、必要だと知ることで、初めて真の民主主義が存在できる。(本文33ページ~より抜粋)
たいへんユニークな提案として、労働プールという考え方が示されています。
もし自分の時間が時間給による労働で占められるのではなく、浮いた時間を毎日ためておいて世界の労働プールに登録できるとしよう。そしてだれも人に雇われない世界を想像してみよう。その世界はお金のために働くのではなく、楽しむために働く、あるいは自分が役に立っているという実感を感じるために働く、または学びたいという欲求のために働く。すべての人が自分たちのための仕事をすることを求められ、または他の人を説得して労働と交換する。
ドクターは自分で床掃除をする。銀行家は自分で窓を磨く。ゼネラルモーターの社長は自分でオイル交換をする。何もしない王子様は本の中にしかいない。遺産で生活をするという身分はどんな社会にも存在しない。貯めておいたその労働プールは効率的に使い、家庭では作れない(作らないほうが良い)どうしても必要なものを生産するためのものとする。―歯医者の機械、ジェット機、石油精製施設、製鉄施設などだ。
私の想定ではこの仕事は全員が参加すれば1日1時間から2時間で済むはずだ。多くの仕事は長時間続くと辛いものになるかもしれないが、短い時間で済むのであれば本当におもしろく、楽しめるものになる。
この新しい仕事の世界についての私のビジョンでは、1年分の労働を行うために、場所を固定する必要はないと考えている。ある年はフィンランドの農場に、別の年は韓国の陶芸スタジオに、別の年はマレーシアの林業プロジェクトに参加できるかもしれない。新しい仕事の組み合わせを機能させる方法をデザインすれば、可能性は無限に広がる。このシステムでは人が多すぎて給料が少なすぎるのではないかと心配する人もいるだろう。だが時間が減るにつれて給料が下がるのであれば、誰が文句を言うだろうか。なぜ、物が充分にある経済において、働かないことが問題となるのだろうか。余剰労働の問題を解決するためには、労働時間を短縮し、仕事をシェアし、物をシェアすれば良いのだ。
(本文103ページ~より抜粋)
目 次
はじめに
序
デザインによる社会
美しさ
仕事/パン労働
教育/支援する
非暴力/緩やかな革命
財産、富、宝物
シンプル
ライフワーク
著者について
翻訳者あとがき
著者紹介
【著者】ウィリアム・カパスワイト(ウィリアムは通称ビル)
ハーバード大学教育学博士
ウィリアム・カパスワイトはアメリカ北東部メイン州の広大な自然の中で40年以上も暮らしてきました。車を降りた場所から約2.5km歩かなければならない。そこでほぼ全てのものを自分で作るという生活をしていた人です。そこではハーバード大学の課外授業も行われていました。
また世界を旅して伝統的な技術を継承している人々から学び、思索を深めてきました。「民衆の知恵が私たちの財産だ」。社会をデザインし直す必要性を訴えてきた彼は特に教育システムをデザインし直すことに注目しました。
それは一人ひとりのニーズを満たす社会を作るためにはどうすれば良いか。教えるのではなく気づいて学ぶことを促す風土は作り出すことはできる。「教師と生徒という区別をなくして、全員が学習者となる社会だ」。スコットネアリングとの親交からガンジーの思想にも触れ、心の豊かさを育むことでもっと楽しく生きる方法を探求してきました。
【翻訳】林 寿夫 (はやし としお)
1948年生まれ。東京商船大学機関科卒。YMCAのキャンプリーダーなどを経て、1982年(株)野外計画を設立。1987年、福島県裏磐梯に野外教育専用のキャンプ場として「小野川湖レイクショア野外活動センター」を設立。1995年、プロジェクトアドベンチャージャパン設立。代表。2022年、同社相談役。
千葉県御宿で生まれ、東京の下町で育つ。近所ではお調子者で、粗忽者として知られ、幼稚園には行かなかったのが唯一の自慢。その頃、下町ではお金持ちの、良い子しか幼稚園に行かなかった。お金持ちでも良い子でもない子はみんな幼稚園より面白いことをして遊んでいた。その後、偶然受かった東京商船大学で登山とYMCAのキャンプリーダーをやった後、練習船で行った東サモア、パゴパゴで見た一日中なにもしないでボーと暮らすおじさんに強い影響を受け、人生を踏み外して現在に至る。
