ISBN:978-4-910205-97-7
定価:\1600+税
作品概要
男は心の底のどこかに「無頼であること」に憧れをもっているものだ。プライドをもって自分が正しいと信じた規律に基づきまっすぐに自分を貫いて生きることへの淡い願望である。
本作品は、これまで映画やテレビで幾度となく放映された眠狂四郎像を根っこから覆そうと試みたものである。無敵の円月殺法を武器に自由奔放に行動するニヒリスト狂四郎というイメージからは彼の真実の人物像が浮かび上がってこない。そこで著者は狂四郎自身の対話と独白を分析し推理することで彼の人間性に迫りたいと思ったのである。そして困難な作業のなかで狂四郎理解のキーワードらしきものが見えた。それは二人の人間の交情がもたらす「仁」という情感である。狂四郎独自の論理から導かれて、からくも彼が生きる意味を見出そうとしているものである。ハードボイルドな彼の言動のなかに本当の男のやさしさを察していただければ幸である。
著者紹介
昭和十六年 室蘭市生まれ。現在は町田市在住。八十歳
昭和三十八年 工科系大学を卒業後、上京し四年後に
カナダに移住、トロント市に五年半滞在の後に昭和四十三年
に帰国しその後、様々な雑業に携わる。
平成二十五年から浄光院森巖寺(浄土宗)に勤務し現在に至る。
八年余の就業から仏教に生きる方向性を見出す。
本編の主人公眠狂四郎の生き方に通じる無量寿経の「独生独死独去独来」を座右の銘とする。処女作「心の琴線」(武蔵野書房)を契機に、精神分析に傾倒。二十余年を経て今回はライフワークの気概で本作を発表する。