ISBN:978-4-434-35988-0
定価:\1500+税

作品概要

金メダルを取り損ねた。
 
バドミントン世界ランキング一位だった柿田が、一年半も前に、先輩に誘われて、喫茶店で賭博をしていたと、千経新聞に報じられた。その結果、対外試合出場停止処分となり、直後に迫っていたオリンピックの辞退に追い込まれた。果たして、このギャンブルスクープは必要だったのか?柿田が金メダルを取ってからの報道でも良かったのではないだろうか?そこに、ジャーナリズムとしての武士の情はなかったのか?
 
時が経ち、世の中には、コロナが蔓延した。そのコロナ禍絶頂期に、二つ目のギャンブルスクープがあった。検事総長を目前にしていた検事正が、新聞記者と賭け麻雀をしていたのだ。それを知った世間は大騒ぎとなった。法曹界のトップの大失態に、当事者である検事正は辞職に追い込まれた。しかし、賭博をしていた新聞社側は責任らしい責任を取らずに事件は終幕した。
 
この二つの事件には世間ではあまり知られていないある共通点がある。
一つ目のギャンブルスクープをした記者が、自ら主役となって賭け麻雀を演じていたのだ。喫茶店賭博を報道した記者が、検事正といっしょに賭け麻雀をしていたということである。
この前代未聞の大事件に関与していた新聞社は社長が責任を取らずに居座った。
世間を騒がせたジャーナリズムとしての責任の取り方として、どうあるべきか。そう問題視されていた矢先、社長が暴漢に襲われる。
『恥を知れ』
それが、この暴漢が居座り社長に言い捨てた言葉だった。

著者紹介

八十島コト