ISBN:978-4-434-34790-0
定価:\1400+税
作品概要
釣り好きの英文学科の学生勝は河口のキビレ釣りで早朝、ジョギング中の夏海と出会う。夏海には一人娘の美沙がいたが、彼女を出産する前に夫は海の事故で亡くなっていた。
夏海はすぐそばの河口で美味な魚を食べられることを知り、勝に釣り講座を開いてもらう。父無し子の美沙にとっても三人で星空を見つめながらの夜釣りは特別の晩だった。
美沙の高校受験をバックアップすることを夏海に依頼され、亡夫のサーフボードの店を引き継いでいる夏海宅と自宅を往復する日々となる。受験が成功裏に終わると、夏海には勝を引き留めておくすべはなかった。
釣りがもたらした出会から二人の関係は進展していくが、互いの心を打ち明けられないまま時が過ぎて行く。
母の心を知る美沙は沈黙を保つ母に歯がゆさを感じ、一度も呈したことのない苦言とともに涙を流しながら部屋に引きこもった。
一方、経済的苦労続きの家庭ではあったが、勝も英語の教員になるための留学を決意した。夏海母娘には告げずに渡航し、多くの学びを経験しながら夏海への思いはつのるばかりだった。半年経った頃クリスマスとなり、初めてメールを送った。淡々とした美沙からの返事に一抹の不安を覚える。帰国間際の連絡にも返信はおろか既読にもならず帰りのフライトの時間がじれったかった。帰国の翌日、勝は夏海宅に向かい……。
費用の膨らむ海外留学を、裕福ではない家庭からいかにコストダウンさせてどう実現するか?国際化の進む現代において、日本の若者たちに求められる手作り留学の一形態が本文の中に紹介されている。
また、小説の後では、ストーリーに織り込まれた釣りの極意が、著者の経験を通じて痛快に語られ読者を唸らせる。1冊で1.5冊楽しめるこの釣り恋愛小説は「釣り文学」の新たな切り口だ。
著者紹介
釣石美水(つりいしびすい)
1980年早稲田大学卒業。
同年ESL教授法研究のためカナダに留学。カナダ滞在中の週末はフライフィッシングに没頭。高等学校教諭退職後、非常勤講師となる。
釣りは3歳より始まり、少年時代にヘラブナに夢中になる。タナゴ釣りから磯釣りのイシダイ釣りまで淡水海水の両方をマルチにこなすが、イシダイ、イシガキダイ(クチジロ)を求めて屋久島には30年間釣行。小笠原諸島で瀧澤作の和竿でイシガキダイ(クチジロ)を釣り、その竿のすばらしさをこよなく愛する。