ISBN:978-4-434-34465-7
定価:\1500+税
作品概要
「トムデールの再会」
トムデールは、投資家で孤独な老人。ある日、彼は道で転倒する。助けたのは遠い町の女性記者ティアラ。彼女の優しさにトムデールは身の上話を始める。孤児で心を閉じた少年時代。支えは愛猫のミーシャと孤児院長の親戚の少女クララだった。しかしクララは白血病で、ミーシャも肺炎で死ぬ。神への不信から、ひねくれたトムデールは大人になり、競馬で大金を手にし投資家となった。今は嫌われ者の老人だと話し終えた時、彼はカフェで目覚める。全て夢だったのだ。しかし夢で話した過去が彼に反省を促す。苦しむトムデールは再び夢を見る。大好きなミーシャがいるのに触れることができない。クララが現れ「心を愛で満たすこと」等アドバイスをしてくれる。ミーシャを愛した子供の頃の純粋な心を取り戻そうと必死になる彼に様々なことが起こり出す。事故で入院した彼は看護師の優しさに触れ、人間不信から脱却。孤児院に寄付するが、ホームレスのサムスに、愛を伴わない行動は真の善行ではないと諫められる。彼の言葉に反省したトムデールは、サムスと貧民街の家を一軒ずつ訪ね、自ら苦労し、援助を行う。一年後、彼は人々から尊敬され、慈善家と呼ばれるようになるが・・・。
「クリスマスリース」
小さな町で、父母の後を継ぎ、パン屋を営むシンシアは二十代半ばの美しい女性。愛猫のマリアと二人暮らし。彼女には深刻な悩みがある。弟のトムが五年前から行方不明なのだ。ある日、店の勝手口に見知らぬ浮浪者のような男が。優しいシンシアは、近くの共同浴場に行かせる。帰るとさっぱりとした紳士だった。彼の名はクリム。気があった二人は、互いの身の上を話し合う。トムの事情を知ると、クリムは不思議な話をする。ある夜、ホームレスのクリムのテントに、赤いコートを着た、白髭の見知らぬ老人が訪れ、不幸な状況下にいる心が綺麗な人を幸福に導くクリスマスリースの作り方を教えてくれたというのだ。クリムはその作り方をシンシアに教えるという。一旦断ったシンシアだったが、その夜トムの夢を見て、リースを作ろうと決心し、一晩かけ完成させる。美しく光ったリースを居間に飾ると次々と不思議なことが起こり出す。トムの恋人のナタリーのトムと撮った写真に、無かったはずの船が現れ、シンシアがリースを見ていると「記憶喪失」の言葉が浮かぶ。リースからの強いイメージでテレビをつけると外国の海難事故のニュース。インタビューに映ったのは、なんとトムだったが、途中で倒れ、意識を失ってしまう・・・。
「暖 炉」
健一は建築家。設計事務所を営むが、多忙すぎて家庭を顧みず、妻は息子を連れ実家に帰るが、健一には、妻と子の気持ちが全く理解できない。親友の雅史が心配し、健一が設計した自分の別荘での休暇を勧める。山の別荘は、立派でリビングに暖炉がある。その火を見つめると不思議な映像が現れ、健一は自分の心と向き合うことに。第一夜は過去。幼い頃事故死した両親。その両親を少し恨んでいる自分。だが、今まで気づかなかった両親の自分への深い愛。また、育ててくれた祖父母の深い愛を炎の映像で知る。次の日の午後、見知らぬ少年、武が訪れ、健一を滝に誘う。武も両親を失い祖父母に育てられているが、その明るさに健一は魅かれ、話すうちに武の考え方は元建築家で食堂を営む祖父の教えの影響と知る。第二夜は現在。暖炉に健一が映るがいつも苛立ち、妻と子は寂しがっている。愛の薄い自分を映像から感じ取り、健一は反省する。悩みが深くなった健一は、翌日、武の祖父から自分を客観視する等、深い人生観を聞く。第三夜は未来。暖炉には何も映らない。突然の睡魔で健一は夢を見る。そこには家族といる自分の姿が・・・。
著者紹介
文月聖二(ふみづき・せいじ)
1959年、大阪市生まれ。
1984年、鹿児島大学工学部建築学科卒業。一級建築士。
父が経営する大阪府堺市の建築設計事務所に勤務。多くの公共的建築物(大学・庁舎・音楽ホール等)を設計・監理する。
その後、鹿児島県の霧島高原に移住。建築の仕事の他、兄、妹と三人で絵本・童話創作チームを設立。主に絵本を共同制作する。自らは童話・児童文学・小説を多数執筆する。
作品に、絵本「じゅうごやの ごほうび」(ひかりのくに) 、小説「左手の疎画」(セルバ出版)がある。