ISBN:978-4-911093-83-2
定価:\1500+税
作品概要
肥後の学者井沢蟠竜子が著した「広益俗説弁」に「太陽を射る話」が収録されている。
垂仁天皇のとき、九つの日輪が出た。射手八人に勅命が下り、武蔵国入間郡に高い棚をかまえ偽物の八つの太陽を射落した。偽の太陽の化身であるカラスの首から採り出した玉を日本各地の神社に収めたというものである。それぞれの神社のある地点を地図上において繋げた結果そこに顕われた線、それは一年の中での季節の節目である冬至・夏至・春分・秋分における日の出、日没の太陽の動きに重なったのである。
ここに登場する各神社のほとんどが日本の歴史上における古社ばかりであり、そこから導き出された結論は天孫降臨の貌、「国土平定の剣」と「三種の神器」による日本国土守護の呪術の姿であり、それはまた軍神の日本国土守護の形でもある。
太陽を射った「入間」と同緯度上には東洋における最古の天文台といわれる古代新羅慶州の「瞻星台」の存在がある。また古事記神話において国譲りを迫った天孫族の使いであるタケミカヅチ神を祀る鹿島神宮とそれに反抗対決したタケミナカタ神を祀る諏訪神社が北緯36度線上で東西に並んで存在することはよく知られていることであるが、その延長線を西に進むとそこに古代新羅の国家的太陽祭祀の地(迎日県・都祈野)が存在する。日本国土守護の呪術はこれらの地を指標とし構築されたとおもわれ、またそれに関わったであろう新羅系渡来人の存在が窺えるのである。中世において仏法における「三種の神器(霊宝)」の一つ「神璽」とされる「独鈷形日本図」、そこには古代日本国土守護の呪術の姿の記憶が反映されているのではないか。「太陽を射る話」それこそが最古の「日本図」であろう。
著者紹介
原直正
1947年長野県諏訪市生まれ。
武井正弘氏主宰「諏訪研究会」、山本ひろ子氏主宰「成城寺小屋講座」に参加。
現在、諏訪の信仰史、考古、民俗等を研究する「スワニミズム」および「諏訪神仏プロジェクト協議会」会長。2020年5月~2023年3月まで「LCV-FM769」で諏訪信仰をテーマのコナー担当。
2021年4月より月刊『JA’s民』に『諏訪は奇なり』を連載中。著書に『龍蛇紳』(人間社 樹林社叢書)。共著に『諏訪学』(国書刊行会)・「スワニミズム会誌」。