ISBN:978-4-911093-66-5
定価:\1400+税

作品概要

実際に現場を経験した、元移植コーディネーターへの取材により、脳死判定や承諾書の署名、説明時に家族の座る位置など、本物の書類などを使い、可能な限り実際の現場を忠実に再現した、誰にでも起こり得る事を書いたフィクション。
知らない番号からの着信は、事故に遭った妻の緊急手術の承諾を求めていた。
慌てて駆けつけた病院で再会したのは、「脳死状態」という診断をされた身体が温かい妻と、彼女が残していたドナーカードだった。
そして私は、法的に妻の死を認める判定をすることと、まだ動いている彼女の臓器を提供するという判断を迫られた。
心理的圧力を与え無いように配慮された移植コーディネーターの説明を受け、床の振動にまで気を遣う厳格な脳死判定に立ち会っても、心には棘が残ってしまった。
多くの病院スタッフと、移植コーディネーターの、心遣いに感謝はしているが、自分の決断が正しかったのかの答えが出ないまま、一年間を過ごしてしまった私は、妻が行きたがっていた神社に一人でやってきた。
縁結びと病気平癒の御利益があると云われている神社は、周囲に人家の無い木々の中でひっそりと歴史を重ねていた。
そして私は彼女に出逢ったのだ。

著者紹介

暁喜綾敬
東京都出身。
江戸っ子の両親から生まれ、多摩地区で育った為、標準語が苦手。
高校在学中に雑誌モニターを経験。
ヨーロッパ留学中に東西冷戦の終結やイラクのクェート侵攻があり、多くの国籍の人と話をして、その様々な考え方に影響を受ける。
表面的な現象の記述よりも、心の描写を好む。作品では、敢えて固有名詞を出さなかったり、登場人物の名に隠した意味を持たせたりするなど、内容以外にも読者を楽しませる工夫をしている。
「人生、笑って生きていく」がモットーで、他人を楽しませるのが生きがい。
小学生のようなイタズラが得意。