ISBN:978-4-911093-37-5
定価:\1400+税

作品概要

1月5日
旅の途上は、あなたがこれまでに歩んできた苦渋に満ちた文脈からあなたを救い出し、かつてあなたがあきらめて手放した過去の経験と記憶のすべてをあなたが自在にナビゲートできるようにあなたを幻想的な空間へといざない、重くのしかかる痛みを感じなくなるような自由な場所であなたを開花させるのです。(本書より)

6月5日
旅の途上の中央広場で赤子にやさしい眼差しを向ける母親、優雅な記念碑を眺める観光客、ガス灯の光を頼りにレストランテの場所を確認する異邦人、ベンチに腰掛けて愛を囁き合う恋人たち、祈りを捧げる敬虔な信者たち。視線の先にあるものは異なっていても、彼らはみな例外なく同じものを見ていたのです。(本書より)

本書は、著者が学術研究にてテーマにした「旅」のエッセンスを、実際に各地を巡った経験から蒸留し、私たちの日々の暮らしを「旅」として眺めることを促す詩的エッセイ。どこへ行って何を見ても「旅」を見出す著者が「旅」の彩りを1年の季節になぞらえ、どこへ行ったとか何を見てきたとかいうことではなく、どのように感じられてどのように考えたかというスタンスで日常に「旅」の香りを添えながら書き綴った12章365編の小作品集。

著者紹介

中島哲
東京都世田谷区出身で現在は神奈川県横須賀市在住。
職業:旅人。米国留学で「異人」であることを強く意識する体験を経て、上智大学比較文化学部(現国際教養学部)にて「異郷」に出くわす。卒業後に中南米でのホームステイと太平洋島嶼での旅空間を通じて「異郷」と「故郷」が融合したので、頭を冷やして思考と感情を整理するために早稲田大学大学院の修士と博士課程にて「旅」をテーマに研究を始める。少しずつ新たな「故郷」が見え始めてきたので、アカデミーを離れた旅の途上から「旅の途上」の少し詩的な物語を発信する。
表紙イラスト:内田明子