ISBN:978-4-911093-09-2
定価:\1400+税

作品概要

人には、必ず死が訪れます。生まれたからには、死ぬのは必然です。でも、多くの人々にとって、このあたりまえのことを、受け入れることができません。自分が死んだ後、無になってしまう。自らの死後、ただ時間が永遠に流れ、二度とこの時間の流れに戻ってくることはない。そう考えますと、本当に怖しいです。しかし、死を避けることは不可能です。いかに死を受け入れるか、死生観が重要となります。
昔は、死生観の形成に宗教が大きな役割を果たしていました。例えば、死んだ後、極楽浄土に往って、すでに亡くなった人々とも再会できるというものです。こうした宗教観が共有されていた時代であれば、死の受容の問題はそれほど大きくはなかったのかもしれません。ところが、科学万能主義の現代では、そうした極楽浄土についても懐疑的となり、新たな死生観が必要となります。
本書は、読者の皆様の死生観形成の一助になればという視点で、書いております。一方で、私の死生観への考察の変遷でもあります。ただし、本書には、こうすれば死を乗り越えられるというような絶対的な方法は、残念ながら、ご紹介できておりません。ただ、読者の死生観の形成のヒントになればと考えております。死生観は、十人十色です。少しでもそのお役に立てれば幸いです。
本書は、仏教などの知見を利用しますが、学問的な探求ではなく、少しでも死の受容に役立つものがあれば、なんでも取り入れるというスタンスでおります。重要なのは、自らの死の受容であって、多くの人々を対象とした分析ではないということです。ただただ、死を乗り越えるためだけに、知見を利用して、考察を進めていきます。言い換えますと、心の底からの救いとしての死生観を求めていると言えます。

著者紹介

辻本臣哉(つじもと しんや)
1964年京都府生まれ。一橋大学経済学部卒。
30年以上国内外で資産運用業界で働く一方、在野で仏教を研究。博士(仏教学)。「神仏習合から反本地垂迹説への展開 ー実者神肯定の歴史ー」、「迎講と来迎図ー山越阿弥陀図の画因についてー」(『武蔵野大学仏教文化研究所紀要』)、「天台本覚思想と時間」、「シンガポールにおける仏教の現況」(『印度學佛教學研究』)など論文多数。