ISBN:978-4-910692-41-8
定価:\1600+税
作品概要
本作は、人気アニメ「プリキュア」に描かれている、ある女子中学生の「父親」を自称する作家が、様々な人とのつながりをもとに独自の親子論を物語にして描いたものである。かの作家の「プリキュア愛」に発する、プリキュアたちへのオマージュのほどをお楽しみいただければ幸いです。
由緒ある家系の跡取りとして育った元キャリア官僚・賀来博史と、養護施設(現在の児童養護施設。以下「養護施設」)よつ葉園に入所経験のある作家・米河清治は、岡山市内の文教地区と名高い公立小学校の同級生。
賀来氏には、一人娘のまどかがいる。彼女を賀来家の跡取りとして育ててきたものの、葛藤の結果、娘の自律性に任せることにした。彼の選択に影響を与えた同級生の米河氏は、生涯独身を貫く決意をしている。現に交際相手も実子もいない。
しかし彼はなんと、娘がいるとネット内外で公言している。彼が毎週日曜朝に欠かさず観る人気アニメ「プリキュア」シリーズに出てくるキュアパパイアの一之瀬みのりという文学好きの少女が、その「娘」であるとのこと。
中学生時代のアイドル・松田聖子の歌を引合いに出した米河氏は、彼女の歌う名曲「蒼いフォトグラフ」を、賀来氏の父子関係にトレースし、そこから賀来氏の娘まどかの成長過程を適示し、彼にとって次のあるべき親子像を提示する。
賀来氏は、米河氏の少年時代のある言葉を、子育て中に思い出したことがあるという。それは、あの頃の歌番組「ザ・ベストテン」を養護施設の消灯時間故に見られなかったことによるルサンチマンにあふれた、こんな言葉であった。
幼稚園のガキでもあるまいし、9時やそこらから寝ていられるか・・・。
親子というものは、血縁や法に基づくものだけがすべてではない。
米河氏のようにアニメのキャラクターと実在人物の間に父子関係があるというのは極端な例にしても、血縁に基づかない「親子関係」と言い得るものは、人間社会においていくつも見られる。米河氏が幼少の一時期育った養護施設のように、入所児童(子どもたち)と職員と呼ばれる大人たちの関係もまた、その典型である。
中学卒業後すぐ左官職人に弟子入りした児島秀一氏のエピソードは、まさに昔ながらの親方と徒弟の関係。児島青年が養護施設くすのき学園で幼少期を送ったことを考え合わせれば、これもまた父子関係といえないとは言い切れまい。
幼児期のほんの数か月とはいえ、養護施設出の生活を送った小田英一氏にとってはどうか。物心ついていなかった時期のこととはいえ、そこで世話をしていた下山美香保母とは、実際に親子程度の年齢差があったことも踏まえれば、確かに、これもまた、親子の関係性のひとつと言えるのではないか。あるいは、現在の高齢者対象の各施設における利用者と職員の関係もこれに似たものであり、職員らは、高齢の利用者らにとっての「第三の息子または娘」と位置づけができるかもしれない。
この物語中には、昭和から平成、そして令和の今にかけての数十年来にわたる、日本において育まれてきた文化が色濃く、登場人物たちに根付いている。
本書の中に登場する人物同士には、必ずしも接点があったわけではない。
しかしそうであっても、実はある場所において気付かぬうちに接点があるという例も確かにある。その象徴として、岡山市内の喫茶店「習志の」が、時代を超え、語る人を変えつつ、本書中に幾度か登場している。食を取巻く世界もまた、人を生かしていく「文化」を形作っているのである。
文化の持つ力と、それをベースにしてそれぞれの時代を生き抜いてきた人たちのさまざまな視点から繰り出す人間模様を、本作を通してお楽しみいただきたい。
著者紹介
与方 藤士朗(よかた とうしろう)
本名:米橋 清治(よねはし きよはる)
1969年 9月12日生
6歳から18歳まで養護施設(現在の児童養護施設)に入所。
大学入学資格検定(大検)合格、岡山大学法学部第二部法学科卒
現在、教育関連会社専務取締役・著述業(当シリーズの執筆他)
「プリキュア御意見番」として、毎週日曜に作品評をアメブロ等にて配信中。
「カクヨム」上にて、本シリーズ以外の作品群も現在公開・更新中。
ライフワーク 鉄道研究(岡山大学鉄道研究会OB)、日本プロ野球史研究
アニメ「プリキュア」の視聴
著書 「とむらいの汽車旅2万キロ」本名名義 2006年9月 吉備人出版
小説養護施設シリーズ1 「一流の条件~ある養護施設長の改革人生」
与方藤士朗名義 2020年6月 つむぎ書房
小説養護施設シリーズ2 「超二流の道~ギミックに引出された熱量」
与方藤士朗名義 2021年6月 つむぎ書房