ISBN:978-4-434-29030-5
定価:\1400+税
作品概要
ストーカーとは相手への想いが強く関係を断ち切れない人を言うのではない。
精神障害者に「他人への異常な執着」という1症状が表れた状態のことを言う。
ここでいう精神障害とは人格障害、発達障害、統合失調症のことである。
人格障害者(反社会性パーソナリティ障害者=サイコパス、自己愛性パーソナリティ障害者=ナルシスト、境界性パーソナリティ障害者)の治療は難しいが、発達障害や統合失調症の人は早期に治療を受ければ改善する場合が多い。
統合失調症などの妄想性精神疾患は、脳内ドーパミンの分泌調節がうまく働かないことにより引き起こされる。
ドーパミンとは楽しい時、恋をした時、達成感を味わった時などに分泌され、さらなる意欲と活力を生み出す神経伝達物質である。
ドーパミンを適量分泌し続ければ、勉強や仕事へのモチベーションや集中力を高く維持することができる。
しかし過剰に分泌されれば、幻覚を見る、妄想を抱く、暴力的になる等の弊害がもたらされる。
「天才と狂人は紙一重」という言葉があるが、ドーパミンをうまく分泌し研究、学業、仕事、スポーツで高い成果を上げる人とドーパミンを分泌し過ぎて興奮状態になる人とではドーパミン量差が紙一重なのだ。
ドーパミンとは、まさに諸刃の剣である。
健常者の場合、恋愛中に分泌されたドーパミンは失恋とともに急激に減少し気力を失う。
しかし元々ドーパミン調節がうまく働かない精神障害者では、失恋後もドーパミンの減少があまり起こらないと考えられる。
気力を失うどころが、意欲的に相手に付きまとい、意欲的に相手に嫌がらせを行う。
精神疾患を持つ人が失恋した場合、必ずストーカーになるわけではない。
相手につきまとい、嫌がらせを行う等の行為は精神疾患を発症する前の人格に起因する。
元々、ストーカーとなる人格がその人にあり、精神疾患のためにブレーキが掛からなくなるのだ。
ストーカーはドーパミンの作用により、行為をエスカレートし、ドーパミン過剰により暴力的になっていく。
時間と労力を費やし相手に嫌がらせを行い、拒否されただけで相手を殺傷してしまうのはドーパミンの仕業なのだ。
多くのストーカー殺傷事件で、加害者は被害者を不必要に何度も刺すという残虐さを見せる。
しかしその残虐さとは裏腹に、加害者の外見は優しく良い人に見える場合が多い。
本書では、作者が自身の経験を基に、いかに早くこの種のストーカーを見抜き、どのように予防策を講じればよいかについて解説した。
著者紹介
森本百合子(ペンネーム)
1981年兵庫県生まれ。2006年大阪大学卒業。
勤務医12年目の2017年、職場で妄想性ストーカーと出会う。
警察、弁護士、興信所に相談し、専門外であるが犯罪心理と精神疾患の勉強を始める。
2019年秋から体調を崩し職場を離れたが、2021年現在なお非通知着信や著者本名の偽accountでクチコミが書かれるという嫌がらせを受けている。
日本で起きる殺人と放火の約10~20%は精神疾患を持つ犯罪者によるもので、動機が妄想や幻覚からくる場合、誰でもが被害者となり得る。
差別や偏見を防ぐため精神障害者が起こした事件は詳しく報道されない傾向にあるが、それでは犯罪抑止に繋がらないと著者は考える。
多くの人が精神疾患について正しい知識を得て、必要に応じて行政の力を借りる。
理不尽な事件が減ることを願い2021年、ペンネームで本の出版を行った。