ISBN:978-4-434-36569-0
定価:\1500+税

作品概要

仙台藩片倉家に起こった史実を背景に、ひとりの幼い娘の成長を通して、時代の波に翻弄され苦悩する侍と村足軽との交流、村足軽だった男の夫婦愛、なさぬ仲でも子を慈しみ続ける老妻の母性愛を描いた物語。
戊辰戦争で降伏した仙台藩は、明治新政府から大幅な領地削減を強いられた。その仙台藩で家老職を務めていた白石城主片倉家は、主家の領地削減の影響を受けて一万八千石の領地を失ってしまった。
片倉家の凋落で無禄になった家臣たちは、窮余の策として蝦夷地移住に活路を求める。幼い娘チカノの父佐竹大治郎は蝦夷移住隊に加わることを決意するが、蝦夷地の厳しい環境を憂慮し、村足軽だった矢島清六に、蝦夷で暮らす見通しが立つまでの三年に限って愛娘の養育を託そうとする。佐竹の願いを聞いた清六は、子を授かることができなかった自分たち老夫婦に幼子を育てることができるだろうか、そんな不安を感じながらも佐竹の願いを受け入れる。
一方、清六の不安とは裏腹に、佐竹からの依頼を知った清六の妻は、なさぬ仲でもいいから母になりたいと願い、老夫婦と幼子の生活が始まる。
やがて、清六夫婦から豊富な愛情を受けて成長したチカノは、清六の思いにかかわらず予想もしなかった数奇な運命をたどることになってしまう。

著者紹介

かわむら文吾
1954年、福島県生まれ。
大学卒業後、鎌倉市役所に入庁。公務員として現役生活を続ける傍らいくつかの短編小説を書くが、いずれも未発表。定年退職を契機に、江戸時代に暮らす人々の心の交流をテーマに、本格的な執筆活動を開始。