ISBN:978-4-434-35083-2
定価:\1500+税

作品概要

「いくつもの星のかけらが天に散る夜、二つの魂は再び出逢う」
晩秋の夜更け、小説を執筆中の森本水樹の耳もとで誰かがささやいた。
どこか懐かしいその声は、彼の心の中に封印されていた記憶をよびさます。
幼い日、姉の光砂と見上げた夜空。天から降り注ぐ星々に見守られながら、ふいに触れ合った唇‥‥‥。その瞬間から、水樹にとって、光砂は特別な存在になった。胸をこがす思い人は、同じ家で暮らす姉。あきらめることも貫くこともできない恋。その苦しみに水樹は人知れず耐えてきたのだ。
不思議な声を聞いた夜、霊能力を有する祖父の満が水樹に告げる。
「遥か太古の昔、宇宙の片隅に二つの魂が生まれた。二つの魂は何度となく地球という名の星に降り立ち、その度に出逢い、惹かれ合った。けれど、彼らはどんなに強く惹かれ合っても一度も結ばれたことがなかった‥‥‥」その二つの魂とは、水樹と光砂なのだと暗に示す。満は言葉を続ける。「彼らは今生、何度生まれ変わっても叶えられなかった願いを叶えるべくして生を成した」のだと。
姉弟として生まれてきてしまった時点で願いは叶わないと諦める水樹だったが、運命の歯車は彼の願いを成就させるべく、静かに回り始める。
思いがけず知ってしまった光砂の思い、水樹を襲う突然の交通事故、親友である仙堂航太の身を挺した決断、看護師として寄り添う光砂の献身、幽体離脱をして目にした光景。そして、生きる道筋を示すかのごとく、ふいに聞こえてくるあの不思議な声‥‥‥。
やがて機が熟し、場が調い、いくつもの星のかけらが天に散る夜、宇宙の片隅で生まれた二つの魂は再び出逢う。何度生まれ変わっても叶えられなかった願いを叶えるために‥‥‥。

著者紹介

小室初江
1967年 埼玉県生まれ
学習院女子短期大学人文学科卒業
二人の息子たちが幼い頃、なんの気なしに書いた物語を大絶賛され、創作に目醒める。
子育てが落ち着いたのち、いくつかの接客業を経て、2010年埼玉県公立中学校国語科の教諭となる。教職に励む傍ら、毎朝出勤前に執筆を続け、2冊の小説を上梓する。
2023年3月 創作活動に専念する覚悟を決め、早期退職。
2000年 第2回「ミセス大賞・小さな童話部門」優秀賞受賞
著書「夏神」「夏の滴」「今夜は月がきれいです」